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HHR/HMのヴォーカルの話。

ロックヴォーカルの発声においてHR/HMほど過酷なジャンルは無い。
ヴォーカリストの喉の都合やら一切の妥協を許さなのがHR/HMなのだ。
ギターがはじき出すヘビーなリフには絶えずマキシマムなヴォーカルパフォーマンスが要求される。
その姿はまさに音楽の格闘技だ。

ギターの一番低い開放弦Eのリフが攻めてきたら、最終的にメタルヴォーカリストはhiEで応酬する。
喉の都合でそこのリフを今日はC♯でお願いと言うわけには行かないのだ。
何でやねんと聞かれても、そう言うもんやねんとしか答えようが無い。
時に、本来の発声の対極にあるような野獣のような叫び声さえも要求されることもある。
音域のフルレンジを使いマキシマムなパワーで2時間のステージをこなす世界。
発声の限界の先にある世界を表現するのがHR/HMの歌の魅力の1つだ。
それがHR/HMヴォーカルの本来の姿だ。

喉の筋肉(輪状甲状筋など声帯周辺筋肉群)を酷使続けると当然喉の筋肉は疲れる。
まさに喉の筋肉は悲鳴を上げるのだ。
喉の筋肉の疲れで声帯を引っ張たり声門を閉じたりする動きが鈍り、結果声帯の動きが悪くなる。
結果、筋肉疲労故の声のかすれを起こす。
そう言う場合、当然声帯も腫れている訳だが・・・
ツアーはその連続と言うことになる。
いくら日頃筋肉を鍛えていようとも筋肉は必ず疲労する。

例えば、プロ野球の先発ピッチャーは中3〜5日で登板する。
肩の筋肉群の疲れを取る為だ。
HR/HMヴォーカリストもピッチャーのような間隔で歌えたらなと思う
喉の筋肉に休養を取りつつツアーするなんて夢だな。
毎日、科学的&合理的な訓練をしているプロアスリートと言え、疲れ知らずと言うわけにはいかないのだ。
喉(声)も一緒だ。
ある広告で、某発声法で訓練すれば、連日何時間歌っても声がかれることは無いと言うことを言っている。
おいおいそんな無茶を言うなである。
特にロック系のヴォイストレーナーは一度メタルのフルライブ2時間を数日経験して欲しいものだ。
ついでに、毎日バスで数時間移動して、夜は空調で乾燥した部屋で寝て・・・

無難な音域内で作曲して、あまつさえ調子の悪い時はキーチェンジできるポップソングならいざ知らず、滅多にキーチェンジを許さない、一切の妥協を許さないHR/HMに限って言えば、連日ライブをして声がかれないで歌い続けるなんてありえないと断言する。
世界中の多くの有名HR/HMシンガーと仕事をしたけど、疲れ知らずのHR/HMヴォーカリストにはついぞお目にかかったことは無い。
世界は広いから疲れ知らずと言う奇特な人もいるかも知れないが、稀だ。
メタルボーカルの神Dioですら声はかれるのだ。
ただその疲れや声枯れを最小限にとどめることは出来る。
それは日々Voice Trainingをすることだ。

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